ケータイ文学的文章の行き着いた先の文法を僕らは実は体験している。
ケータイ文学における文章の書き方が、既存の文章の書き方と異なっていて、それ用の指南書とかが出ているという話は既に既出ですが、その文章が一体ドコへいくのははまだ誰も知らないですが、実は、条件を整理していくと、その行き着いた先の文章作法は既に僕らが体験済みではないかと思い立ったわけです。以下詳細。
ケータイ文学の文章に要求される要素というのは、以下の、
- 一度に表示される文字数が100文字程度。
- 横一列に表示される文字数が20文字程度。
- ページを読み終わると、次のページが表示されるまでに時間がかかる。
- 文字は横書き、下へ向かってスライドする。
と、いう媒体に起因する条件から、以下のようになります。
- 少ない文字数で、簡潔に状況を説明しないといけない。
- 長い文章をかけない。
- ページの読み込みに時間がかかるので、ある段落で内容を完結させないといけない。
そしてこれにしたがって書いていくと、ドラマや物語の脚本と同じような、
- 状況の説明。
- セリフ
だけの文章で、地の文が存在しない文章になります。
以上が、携帯、という媒体を使った際に、文章に必要にされる点です。
そして、以上の条件によって、物語のほうも制約を受けます。
ちいさい出来事が起こって、それに対してウジウジなやむ。というような、明治時代から引き継がれている、人間関係の機微、よしなしごとを書いていてはとてもそれを表現できないので、物語の出来事もでっかい出来事がおこって、それにたいして、わーおどろいた!とかすげーーー!っていう話になります。
まあ、そこらへんは最近のケータイ小説の出版化したもののあらすじを読んでいただければいいんじゃないでしょうか。
まあ、そんなこんなで、媒体からの制約によって、物語と文章作法が限定されてしまうわけですが、これと似たような発展を遂げた媒体があります。
それは初期のファミコンのRPGです。
ドラゴンクエストやFF、桃太郎伝説など。
その物語を作る際に、文字の制約や、一行に表示できる文字数が16文字×3列だったということもあり、挨拶や、村人の話し言葉一語一語について、吟味して入れていったと聞きます。
今のケータイ小説の文体は、ドラクエ以前のファミコンのような状態です。文章や小説を書く才能のある人があまり参入してこず、偶然、そういう文章と話を書けるひとが闊歩していますが、ケータイ小説というジャンルが主流になったときに、そのように、言葉を取捨選択して物語をつむげる本当に才能のある人間が、ケータイ小説を完成させてくれるんじゃないでしょうか。
……まあ、その前に、ケータイ電話の表示文字数や、画面のサイズ、通信性能が大きくなって、普通の小説が普通に読めるようになることのほうが早そうですが。