仮面ライダーカブトが本当に面白かった件。

ということで、面白かった。面白かったんですよ!!(力説)
1年間続けて特撮を見たのは本当に久しぶりです。第1話を見たときのあの衝撃は忘れられません。なんせ、登場人物全員が致命的にいたい。痛くなければおぼえませぬにも程があります。登場するたびに天を突いて、俺の名前は〜と自己紹介をする主人公1、秘密組織の構成員なのに、武器も支給してもらえず多分給料を払われていないので喫茶店のバイトで糊口をしのぐ主人公2、そして、一人称が“僕”で自転車に名前をつけて話しかけ自転車の心が分かるといい常にスケッチブックを持ち歩きメンヘルな絵を描き続けるヒロイン!

な、なんちゅーもんを作ってくれたんや…。

しかもそれだけにとどまらず、これでもか、というくらい痛いキャラがその後も連続で投下。
神の手を持つさすらいのメイクアップアーティストや、小学生のコスプレをして本気ではしゃぐお坊ちゃまや、パーフェクトハーモニー→パーフェクトハーモニーなんてないんだよ! 兄貴!! とか、所詮わたしは、ゼクトのいぬ。とか。

文章を読んでるだけではワケが分からないと思いますが、とりあえず本編を見てください、話はそれからだ。

気がついたら、例のメンヘルヒロインが突っ込み側に回っていたからな…。

まあ、そんなこんなでグダグダを3日間煮詰めたあと、一週間放置したような作品だったわけですがカブトは、でも、それでも面白かった。というか、途中からぐんぐんと面白くなっていった。役者が全員わかいっていうのもあるけれども、どんどん演技もうまくなっていったし、脚本もあてがきがどんどん嵌っていって、役者の魅力をどんどん引き出していっているのが肌で分かった。役者の成長がそのまま脚本家の成長になって、そして登場人物の成長になっていくって言う、ものすごいライブ感を感じさせる作品だった。
そして、この仮面ライダーがすごいのは、本当に子供がみて楽しむ、というか、子供に向けてのメッセージをしっかりと伝えられたことだ。
前作のヒビキは大人の人を意識して、結局主人公がライダーになれない、大人の目から、子供と大人を見る作品になったしまった。アスムはいつまでもアスムのままだったし、響さんも響さんのままだった。

今回のカブトは違った、登場人物がどんどん成長していく、変化していく。関係性も、その人と人との係り方も。
天道総司は最初は本当にオレサマだけの男だったのが、他人を思いやることが出来るようになったし、その総司とぶつかり合うことで、新もどんどん成長していった。ひよりも他人とかかわりあいを持つようになった。

人が人と出会うことで成長する物語、この基本的な“物語”を僕はこのカブト以外にここ数年みていない。
それはセカイ系への決別だと思った。

天道総司加賀美新の友情と成長も好きだけれども、僕は天道総司と日下部総司、ひよりの3人のシーンがすごい好きだ。
現実から逃げだして時空の裂け目で暮らす、日下部総司(ダークカブト・ワーム)とひより。そこへひよりを連れ戻しに来る天道総司
天道総司に向かって、日下部総司は言う。

「ひよりは僕と、世界の外で暮らすのが一番幸せなんだ。僕は天の道なんて行かないよ?ひよりの兄、日下部総司として、ひよりだけをまもって生きていく。それが君に出来るの?」

そして、天道総司は、
「俺は…、ひよりのそばにずっといてやることは出来ない…。」
「俺は世界を守る。ひよりのかえるべき世界を。」
「俺はお前が生まれてきてくれてうれしい。だから俺はお前と、お前が生きる世界を守る。」

天道総司の言うことも、そして日下部総司のいうことも、どちらも正しい。そして、日下部総司の言うことは、ものすごい僕には納得できる。最近の物語はそんな話ばっかりだった。自分と、自分の好きな人との世界を守る。その小さな世界で幸せになる。他の全部を壊して。そういう話ばかりだった気がする。
その物語に対して、カブトは王道のストーリーを示した。まさに天の道。

最終回で総司はいう。
「人間は変われる。人間もネイティブもあるもんか。この世界に生きとし生けるもの、すべての命はみな等しい。他者の為に自分を変えられるのが人間だ。自分の為に世界をかえるんじゃない。自分が変われば世界が変わる。それが、天の道。」

すげー。これってば、セカイ系のテーゼ、
「自分が世界にあわない場合はどうする?世界にあわせて自分を削るか、自分にあわせて世界を削るか。僕は、世界を削るよ。」
への回答ですよ。素晴らしい。なんかスゲー感動したんですけど。本当。
というわけで、カブトは本当に素晴らしいので、是非まだみてない人は見てください。今なら全話YOUTUBEで見れるよ!!みれるよ!!!




あと、余談ですけど、もう、本当に僕は、「誰の言葉?」「俺の言葉さ」に死ぬほど飽き飽きしていて、そのセリフを吐かせた脚本家の口から手を突っ込み、脳髄を抉り出してすすってやるくらいの不快感を覚えるんですが、普段、「おばあちゃんがいっていた…」をいい続ける主人公が、最後、俺の言葉だ、ってたった一回言うのがすごい良かった。こういう、なんていうの、もう50話50話頑張って頑張って耐えて耐えて耐えてやっと出す、っていう、すごい踏ん張り温泉なところもこのカブトのすごいところです。
あと、料理対決2話も見てほしい。アレをみたら、すべての超展開が許せます。